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海は生命体なのか?〜星の意識体とは〜?

然し、酸素を豊富に含む水が、海の底に行き渡らなくなると状況は一変します。

もし酸素がなくなったら、途端に深海は硫化水素を生み出す細菌たちに占拠されてしまうでしょう。

海面の温度がほんの数度上昇するか、大量の淡水が入ってくると、海面付近の水の密度は低くなります。

では、次に非常に水温の高い状況を作ってみます。この酸素をあまり含まないお湯を入れます。ご覧の通り、お湯は水面にとどまったままです。その結果、海の底には酸素が運ばれず、最終的には大量絶滅を引き起こすのです。

酸素が欠乏すると、海中で硫化水素を生み出す細菌が活性化し、有毒な紫色のヘドロで海を満たします。

やがて水中から立ちのぼる硫化水素を含むガスが大気を覆い尽くすと、植物は窒息死し、動物は中毒死します。当然人類も助かる見込みはありません。

これが再び起こる危険があります。ウォード博士は、地球の気温が僅かに数度上がるだけで、小生達は大きな代償を支払う羽目になるといいます。然し、この事は海が生き物である証明にはなりません。

微生物学者ユーリ・ゴービー(レンセラー工科大学)は、知性という観点からこの謎に迫りました。そして、遂に海の生態系が思考能力を備えた生きた、超個体である事を示唆する証拠を見つけたのです。

小生達は、どうやって頭脳を手に入れたのでしょうか?何百万年にもわたる進化の中で、細胞の集団が電気的な接続を発達させて、複雑なネットワークを築きました。

海にも似たようなネットワークがあるように思えます。小生達のように知性を備えているのでしょうか?或いは、小生達以上なのかも知れません。

ゴービー博士は、微生物学者として非常に重要な発見に貢献しました。海洋生物の常識を根本から覆しかねない発見でしたが、その発端は微生物はどうやって呼吸するのか?という素朴な疑問でした。

呼吸とは息を吸い込む事だと、思われがちですが、それは吸入です。本来は体内のミトコンドリア内で、電子供与体から受容体へと、電子が移動する事を指します。

殆どの種は、ミトコンドリア内部で、電子を酸素の原子に放出する事で呼吸します。然し、水生細菌の多くは、海水に溶けた金属元素に電子を放出する事で呼吸します。

そこでゴービー博士は、水生細菌から生命維持に必要な金属元素を奪ったらどうなるか?調べました。

てっきり細菌は窒息して死滅するものと思っていました。然し、結果は衝撃的なものでした。

細菌は生き延びていた上に、細かい毛のような物を延ばし、周囲に張り巡らせていたのです。

ゴービー博士は、友人にサンプルを送って、走査型トンネル顕微鏡で電流を流した様子を見てもらいました。すると、この細かい毛には電気伝導性があると分かりました。

ゴービー博士は、この毛のような物が電気伝導性に優れている事を突き止め、生物的ナノワイヤーと命名しました。

このナノワイヤーは、細菌が呼吸する必要がある際に形成されますが、状況が正常になっても形を留めています。

小生達の脳内には、思考を処理する電気的につながった細胞が約1000億個あります。

ゴービー博士は、海にも無数の細菌細胞から成る、巨大な神経回路があると信じています。

小生達の脳内にあるものと同じく、強く結び付いており、思考能力を備えている可能性があるのです。この電球は、細胞を表しています。電球から電線を通して、信号をこの分岐点へと送ります。

分岐点は信号を、右に送るか左に送るか決めなくてはいけません。信号がコンピューターを通して、トランジスターに繋がると、その信号は右か左か、1か0に変換されます。有機体の場合、トランジスターは細胞に置き換えられます。

細胞は、自身と結び付いた無数の細胞に信号を伝えるのです。そして、多くの細胞が相互接続すると、膨大な量の情報を処理できるネットワークが出現します。

海が思考するかどうか、真剣に検討するなら発想を広げなければなりません。

「1個の細菌は思考できるか?」

と聞かれたら答えは「ノー」です。

「微生物の群集は思考できるか?」なら「できるかもしれない」です。

更に「海は情報を処理して思考できるか?」なら「もちろんできる」と答えます。

海は生物的ナノワイヤーで構成される頭脳を持っているかもしれません。小生達の頭脳とは全く違う構造です。

海底の堆積物には、人間の神経細胞の数を遥かに上回る無数の細胞があります。

これらを神経回路としてつなぐと、人間の脳の1000倍のスピードで機能します。

ゴービー博士の説では、3億6000万平方キロに渡る、海底そのものが丸ごと海の神経回路であり、非常に古くから海は思考しているというのです。

海はどんな事を考えているのでしょうか?大昔から、海底の生命を、神経回路に組み込み続けているかもしれません。それを、何十億年も前から続けているとしたら、とてつもなく深遠な考えがあるのでしょう。

もし海の生態系が、全体として思考する存在であるならば、人間を脅威と見なし排除しようとする可能性もあるでしょう。

そうなれば私たちを待つのは滅亡かもしれません。然し、小生達もまた知的な生物です。

海の感情を知るすべはないのでしょうか?

私たちは海を破壊する寸前なのか?

或いは海に滅ぼされそうになっているのか?

もし海の健康状態を知る術があれば、破滅から逃れられるかもしれません。後、どのくらいの時間が残されているのでしょうか?

生物学者デビッド・マルコリエーゼ(カナダ環境・気候変動省)は、複雑な生態系を独自の視点で研究しています。

一つの都市はそれ自体が一つの生態系です。例えば作ったジオラマを生態系と考えれば、列車は栄養素を運ぶ食物連鎖と言えます。

列車が必要とする人のもとに食料を運ぶように、生態系の中で生物から生物へと栄養を運ぶのが食物連鎖です。

もし列車が止まってしまったら、食料は底をつき町全体が崩壊の危険にさらされます。

ジオラマを走る列車の様子は、一目で分かりますが、海の中で起きている事となると、そうはいきません。

海の生態系は極めて複雑です。

あまりにも大きいうえに、多様な生態系で形成されているので、全体を把握する事は難しいでしょう。

然し、マルコリエーゼ博士は海の健康状態を知る手掛かりがあると言います。そう、その手掛かりとは寄生虫です。

寄生虫は、宿主の体に卵を産みつけ繁殖します。中には宿主に苦痛を与えるものや、宿主を死に追いやる寄生虫もいます。然し、マルコリエーゼ博士にとっては貴重な存在です。

寄生虫が忌み嫌われる存在なのも、無理はありません。

釣り上げた魚が寄生虫ののう胞に覆われていたり、タラの腹を開いて中に寄生虫がいたりしたら、魚を食べたくなくなります(笑)

大抵は、蛋白質が余分に採れるだけなのですが、一般人は感情的ですから、そう考えません。

個々の人間や動物にとって、寄生虫は病気などを引き起こす有害な存在です。然し、多様な寄生虫がいる事は、生態系が健全である証しです。様々な種をつなぐ食物連鎖なくして、寄生虫は育たないからです。

先ずアザラシの胃の中で、寄生虫の成虫が産んだ卵が海に放たれます。

寄生虫の卵は排泄物に混ざって、海底に沈み、やがて幼虫がかえります。

甲殻類が幼虫を摂取し、その甲殻類はより大きな甲殻類に食べられ、更に魚に食べられます。この魚は、アザラシの食料となるのです。

そして、アザラシの胃の中に宿った寄生虫は、繁殖し卵を産みます。卵は排泄物に混ざって、海の中へ沈下し、幼虫に還ります。その様に、こうしたサイクルが繰り返されます。

寄生虫は複数の種の食料となり、時に海中を何千キロも移動しますが、その途中で宿主に何か問題が起きれば、死んでしまいます。

生物多様性の豊かな生態系では、複雑なライフサイクルを繰り返す寄生虫をより多く目にします。

マルコリエーゼ博士は、寄生虫の個体数調査を通じて、生態系を分析しています。

生態系全体を見られなくても、食物連鎖によって栄養素が、適切に循環しているかどうか分かるからです。

それぞれの光が、寄生虫の種類を表していると思って下さい。緑の光と赤い光は違う種類です。線路の上で止まる度に、寄生虫は宿主を変えながら、徐々に食物連鎖の上位へと進んでいきます。

もし、こうした寄生虫が消滅し始めたら、それは食物連鎖が途絶え、生態系全体が崩壊に向かっている危険を表しています。

マルコリエーゼ博士は寄生虫を調べる事で、カナダの川や湖の生態系を、見守っているのです。そして、いつか海でも同じ調査に挑みたいと言います。

海は地上とは全く違う完全な別世界です。月を調べるくらいの準備が必要でしょう。科学者たちは海の事を、知り尽くしているわけではありません。いつどのように破局を迎えるか、誰も分からないのです。

海は意思を持っていて、小生達の心ない行いに対して、報復に出るかもしれません。

いずれにせよ、海が持つ絶大な影響力を軽んじるべきではありません。

何百万もの種が生息する海は、この星で最も驚異的な生物であり、最大にして最古の命かもしれないのです。